乳腺腫瘍

おっぱいの近くにしこりがあるとのことで来院した犬のRちゃん。

大きさはまだ小さいものの、もし悪いものだったら・・・と診断を兼ねた生検手術を決断されました。

乳腺腫瘍のあるわんちゃんは卵巣、子宮にも異常があることが多いため、同時に避妊手術もおこなうことに。オーナーさんは麻酔をとても心配していました。

いざ手術。年齢も10歳を超えていたので、麻酔も慎重に。

卵巣、子宮ともに脂肪に覆われていて大きさは小さいものの、なかなか時間のかかる手術となりましたが、無事、摘出。腫瘍の方も摘出することができました。

Rちゃんは手術後、麻酔の覚めもよく、翌日無事帰ることができました。

犬の乳腺腫瘍とは

雌犬に見られる腫瘍では最も多く、雌犬の腫瘍のうち約半分を占めています。1000頭あたり2例に発症すると推定されており、5歳未満ではあまり見られません。好発犬種はプードル、スパニエル系、テリア系、セッター系、ポインター、ジャーマンシェパードと言われていますが、日本では他の好発犬種も存在すると考えられます。腫瘍の個数は1個だけ発生するより多数のことが多く、良性と悪性の確率はそれぞれ50%ずつといわれています。

犬の乳腺腫瘍はホルモンと関係しているため、避妊手術(卵巣摘出術)を実施することにより腫瘍の発生率に影響が現れます。避妊をしていない犬ではしている犬と比べて発生率が7倍にも上昇します。また、その避妊手術を行う時期も発生率と密接に関連しており、初回の発情前に手術をすると1%未満、初回から2回目まででは10%、2回目以降に行った場合は20%の確率で発症する計算になります。2回目以降になると発情が4回でも10回でも差が見られなくなるため、乳腺腫瘍を予防するためには2回目発情を迎える前に避妊手術を行うことをおすすめします。
乳腺腫瘍は病理組織検査以外では良性悪性の判断が難しい種類の腫瘍ですし、その半数が悪性であるという統計的事実と、治療(根治)するためには外科療法が第一選択の方法ですので治療と診断を兼ねて外科治療を行うのが普通です。


手術方法にはいくつかありますが、腫瘤が1個で周囲組織ともくっついていないような場合にはその腫瘤のみを部分的に切除する場合もありますし、多発している場合には乳腺一部分全体や片方の乳腺(第1~第5乳腺)全てを一括で切除することもあります。いずれの場合にも摘出組織は全て病理組織検査に提出し病理学的診断をつけることが重要です。そこから得られた腫瘍の情報を元にして、手術のみで治療を終了しても根治可能なのか、それとも化学療法を併用したほうがよいのか等その後の治療方針を立てることになります。
術前の検査で既に遠隔転移が発見されたり、手術で切除不可能なほど腫瘍が増大してしまっている時には、根治が望めないため外科療法を行わずに化学療法のみ実施して、転移や乳腺部の腫瘍の進行を遅らせ、ペットができるだけ良い状態で長生きできるような方法を選択します。しかし転移があったとしても、元の乳腺部腫瘍が大きすぎて生活に支障が出たり、傷ついて化膿し疼痛を生じてペットのQOLが低下するようであれば、癌を治す目的ではなく、ペットが快適に生活できることを目的として緩和的手術を行うこともあります。

日ごろから体をチェックしてしこり、腫れがないかチェックしてあげてくださいね。