肥満細胞腫の概要

肥満細胞とは、皮膚の血管や筋肉の周辺、内臓の周辺など、体中の組織に散在している細胞で、骨髄で作られ全身の結合組織で成熟します。この細胞は虫刺されや花粉など、外部から動物の体に侵入する異物を感知すると、ヒスタミンやヘパリンと呼ばれる生理活性物質を放出し、患部に炎症を起こして免疫機能を高め、その異物を退治したり、鼻水を流させて体外に押し出したりして、動物の体を守る重要な働きをしているものです。

肥満細胞腫は、性差別はなく雑犬種に最も多くみられ、発生年齢は3週齡から19歳までと幅広く、平均年齢は8.5歳といわれております。犬によくみられる腫瘍で、その発生率は犬の皮膚腫瘍・皮膚癌の13%に当たります。腹部・脾臓・肺・肝臓・腎臓・胃腸・咽頭・リンパ節・骨髄等のあらゆる部位に発生し、その約90%は皮膚や皮下組織に発生します。

症状

犬の腫瘍の中で、乳腺腫瘍に次いで多いのが皮膚腫瘍であり、その皮膚腫瘍のなかで最も多いのが肥満細胞腫です。症状は様々で、皮膚のどこかにしこりができ、そこから出血したり、蚊に刺された跡みたいに皮膚の一部が赤く腫れていたり、一方では見上、ほとんど判別できなかったりします。よって、犬をなでていてどこかに「しこり」や「腫れ」のようなものに触れる時がありますが、その際「オデキか虫刺されか」と安易に考えず、肥満細胞腫と疑い、動物病院でよく調べてもらうことを勧めます。

また内臓など、体内の肥満細胞が腫瘍化すれば、嘔吐や下痢、食欲不振が続いたりすることもあります。脾臓や腸管などに大きな腫瘍ができれば、ヒスタミンがたくさん放出されて胃潰瘍になることや、出血によって貧血状態になることもありますので、もし性質が悪いものであれば体のあちこちに転移して助からないこともあります。

症状が重くなる前に気づき、早めの治療ができるように、定期的な健康診断をおすすめします。